事業再構築補助金の指針について前回の記事ではその《定義》について大きく4つをご説明しました。
1:新分野展開
※)新しい分野にチャレンジします!
2:事業転換
※)マイナーチェンジして既存の事業からほぼ撤退します。日本料理屋から焼肉屋へ!
3:業種転換
※)フルモデルチェンジして既存の事業からほぼ撤退します。レンタカー屋からペンション経営へ!
4:業態転換
※)既存事業にとどまりますが、製造方法・提供方法を新しい方法に変えます
ここまでは比較的わかりやすいのですが、問題は申請要件にある「新しさ」とは何か?を理解する必要があります。指針では《新規性》と呼んでいるのですが、その内容がなかなか複雑なのです。今回は上記4つのうち新分野展開について《新規性》とは何かを解説します。
最初に断っておきます。《新規性》とは「世界初・日本初といった意味」ではありません。指針にしっかりと明記してあります。《新規性》とは《事業者自身にとっての新規性》です。《新規性》=「当社にとっては未だ取り組んだことがない」と理解してください。
●新分野展開満たすべき《新規性》要件・・・《製品等の新規性》《市場の新規性》
1:《製品等の新規性》・・・つぎの4つの要件をみたして初めて《新規性》に該当します。
A:過去に製造等した実績がないこと
B:製造等に用いる主要な設備を変更すること
C:競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと
D:定量的に性能又は効能が異なること(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る)
2:《市場の新規性》・・・・つぎのAの要件は必ず満たすことで初めて《新規性》に該当します。
A:既存製品等と新製品等の代替性が低いこと
B:既存製品等と新製品等の顧客層が異なること(任意要件)
それぞれ《要件を満たさない場合の例》をあげることで満たす場合を消去法的に説明しています。
1-A:過去に製造等した実績がないこと
※)昔つくっていた部品を再度作り始めることはNGです。あくまで取り組んだことのない新しい分野にチャレンジしなければ申請できません。既に提供したことのあるサービスに再チャレンジするのもNGのようです。もっとも過去のサービスをフルモデルチェンジしたサービスではダメなのか?と言われると判断に迷います。
※)既存製品等に容易な改変を加えたたけの新製品等を製造等する場合はNGとされています。また既存製品等を単に組み合わせただけの新製品等でもNGとなっています。サービス業で既存サービスをフルモデルチェンジしたケースが「容易な改変」「単なる組み合わせ」に該当しないことをしっかりと説明する申請書を書くことが重要ではないでしょうか。このあたりはグレーゾーンになるかとおもいます。
1-B:製造等に用いる主要な設備を変更すること
※)既存設備をつかって新製品が作れる場合はNGです。あくまで新しい投資をする必要があります。
※)既存設備と同種の性能のよい設備を導入するだけではNGです。投資促進税制では性能アップの機械でもOKでしたが、事業再構築補助金ではNGです。この要件だけみても今回の補助金の敷居は高いのが分かります。
1-C:競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと
※)指針では次のような例を出しています。「パウンドケーキを製造している事業者が、競合他社の多くが既に製造しているにもかかわらず、新たに焼きプリンを製造する場合」
※)最初に《新規性とはその事業者にとっての新規性です》と書きましたが、この《競合他社要件》だけが極めて異色な要件となっています。パウンドケーキ製造業者はいったい何を作れば要件を満たすのでしょうか?競合他社の多くが作っていないことをどうやって証明するのかわかりません。シュークリームならOKなのでしょうか?
※)指針では次のような例を出しています。「航空機部品製造業者が、医療機器部品製造にチャレンジした場合、競合他社の多くがそうした医療機器部品製造を行っていないことを説明」してくれ、とのことです。ほかに次のような例を出しています。「ウィークリーマンション経営事業者が、レンタルオフィス業に進出した場合、競合他社の多くがレンタルオフィス事業を行っていないことを説明」してくれ、とのことです。あくまで申請する事業者側が「競合他社はやっていないですよ!」と説明して説得できれば・・・とのことなのかもしれません。しかし、これはどのように証明するのでしょうか?業界大辞典のような資料を添付して競合他社の事業内容を調べるのでしょうか?
1-D:定量的に性能又は効能が異なること(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る)
※)製品や商品の場合、新製品・新商品が既存のものとくらべて数値で性能の良さや効能を計測できることが要件になります。
※)サービス業の場合、そもそも数値で性能や効能を示すことができないので、「比較は難しい」と説明しておけばOKだそうです。
2-A:既存製品等と新製品等の代替性が低いこと
※)新製品等を製造等することで、既存製品等の需要が減ってしまうような計画ではNGです。これは1-Aや1-Bの要件を満たせば自然にクリアできるように思います。単なる性能アップ製品を作るのであれば既存製品が売れなくなり新しい性能アップ製品に代替されてしまいます。が、そもそも単なる性能アップ製品はNGです。
※)新製品等の製造等により、相乗効果を発揮して既存製品等の売上がむしろ増大するような計画だとよりベターです。
2-B:既存製品等と新製品等の顧客層が異なること(任意要件)
※)既存製品等と新製品等の顧客層の違いを年齢・性別・所得・職業・地域・家族構成等に照らしてしっかりと説明できる計画書は、高い評価を得られます。これは任意要件です。マーケティングがしっかりしている会社であれば積極的に計画書で示していくのが良いでしょう。
さて、このように見てみると抑えるべきポイントは次の3つの要件になると思われます。
●1-A:過去に製造等した実績がないこと
※)「容易な改変」「単なる組み合わせ」ではない製品やサービスであると説得力のある説明をする。
●1-C:競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと
※)客観的な資料を引用できると頼もしい。そもそもそうした資料があるのか?
●2-B:既存製品等と新製品等の顧客層が異なること(任意要件)
※)任意要件だが、マーケティングを行って合理的に説明すると採択の可能性が高くなる。
上記以外の要件はあまり迷うことなく判定できるように思います。
最後に新分野展開の要件を満たす場合の例を公表された《指針》から引用します。


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